絵画制作一覧

色鉛筆画・作例(いろいろな技法)

普段の描き方とは違うけど、気になっていた技法を試してみました。

1.グリッド書き

元写真や下絵と本紙に同じように細かい升目を引き、一個一個が対応するようにして形を取っていく方法です。
下絵の転写に昔から使われてきた方法で、色鉛筆画で有名な吉村芳生さんは、この描き方で升目1個ずつ描いてました。
知り合いにもこの方法を使っている人はいて、話には聞いていましたが、「別にトレスでいいんじゃね? 升目引くとか大変そう」と思って今までノータッチでした。
先日ふと思い立って、photoshopで升目を引く方法を調べてみたら、思いの外簡単だったので、ちょうどカルチャーの生徒さんからケント紙を使った写実画のリクエストをもらっていたこともあって、一枚描いてみました。

一時カメラに凝りかけたことがあって、その時使っていたニコンの一眼レフです。
レンズは全部売ってしまいましたが、本体はあまりに買取が安かったので(確か¥1000とか)、なんとなく手元に残っていました。

描いてみての感想は、細かいモチーフは案外トレスより正確に描けるかも。
塗りに入ったあとも、周囲の升目で微妙な狂いを測れるので、「いつの間にかおかしくなっていた」という心配がない。
描きながらグリッドを消していくので、部分ごとに仕上げていく描き方専用。

写真に忠実な細密画を描くなら、ありだなと思いました。

2.こってり塗り

いわゆる写真みたいな色鉛筆画の描き方で、YouTubeの早送り動画でよく見かけます。
プリズマカラーというとても柔らかい色鉛筆(国内ではカリスマカラーが同等品)と、比較的ツルツルの紙(ケント紙等)で、紙目の奥までしっかり塗り込んでいきます。
以前ちょっと試し書きした感じでは、フラットな紙にゴリゴリ塗り込むとタッチが残ったり細かな紙目が浮き出てきたりで、汚らしい絵肌になってしまい、それっきりスルーしてましたが、
たまたま見た動画にアップで写ったシーンがあって、よく見ると、別に絵肌はそんなに整ってない。
ネットの縮小画像にはこれがあるから、絵は原画を見るまで判断できません。
「それなら」というわけで、一枚。

昔から、「プリズマカラーはクレヨン」と思っていましたが、まさにそのクレヨン性がいかんなく発揮される描き方でした。
初手からこってり塗り込んでいくので、ネリゴムは一切効かない。
濃い色の上に明るい色を乗せて、明度の調整が出来る(さすがに覆い隠すのは無理)。
黒が締まるので、インパクトのある絵になる。
強い筆圧で描くので、指が痛くなる。

今回は写真に寄せようとしてしつこく攻めすぎて、絵肌がさらに荒れてしまいましたが、2.3色でスマートにグラデーションを作っていけば、もっときれいに仕上げることは出来ると思います。

どの技法も長所短所があって、いい勉強になりました。
同時に、やっぱり今までの自己流の描き方が一番性に合ってるというのも再確認できたので、また新鮮な気持ちに次の一枚に向き合えそうです。


色鉛筆画・制作過程(完成)

完成です。

人物を宙に浮いた感じにしようと重心を少し左に寄せていたため、絵全体がなんとなく左に傾いて見えていたので、星や星雲の配置を調整してバランスを取りました。
また、髪の広がりや、衣のひだ、他にも所々に小さな違和感があったので、修正しました。

さすがにここまで来て大手術は出来ないし、したくもないので、修正できる範囲はある程度限られていますが、時間と気力の許す限り、少しでも描きたかった絵に近づけられるよう粘ります。
やめ時の判断はいつも悩みますが、「満点ってわけじゃないけど、これ以上手を加えても良くなるか崩れるか、半々だな」くらいの感覚になってきたら、その辺が潮時だと思います。
締切のある絵なら、自ずとそこがデッドラインになるのでわかりやすいですね。

とことんまで一枚の絵に向き合えば、失敗した原因や、どうすればよかったかなど、たくさんの発見があるはずなので、次の一枚がよりよい一枚になるように活かしていければいいと思います。

 
というわけで、7日間にわたって下書きから完成までを紹介してみましたが、いかがでしたでしょうか。

絵の描き方は十人十色。
その一つ一つが、どうすれば最高の一枚を描けるか、長い模索の中で、その人なりの経験から導き出された答えなので、どれが正解というのはありません。
迷ったときは、描きたいタイプの絵を描いている人の描き方を真似るのが一番わかりやすい道だと思いますが、騙されたと思って違う描き方をしてみると、案外新しい発見があったりもするので、とにかくいろいろ試してみてください。

自分にとって気持ちよく描ける方法を見つけられれば、絵を描くことは長く楽しめる趣味になると思います。

 
タイトル:Rebirth
サイズ:468mm×318mm
画材:色鉛筆(カランダッシュ・パブロ)/合成紙

 
~おしまい


色鉛筆画・制作過程(第6回)

ようやく全体にしっかり色が入りました。

空の星と、少女の周りに漂う光の粒は、練りゴムや電動消しゴムを使って白く抜きます。
絵の具なら、スパッタリングで簡単に満天の星空を描けますが、色鉛筆では残念ながら一個一個描くしかありません。
その分、配置に気配りが行き届くので、そういうものと割り切ってコツコツやります。

こうして完成図が明確になると、同時に仕上がりレベルも見えてきて、ちょっと冷静になります。
前もって下絵を作って、それを横目に見ながら描き進めるので、「全然ダメ」という惨状になることは滅多にありませんが、だいたいいつも「まあ、当たらずとも遠からずだな」というところに落ち着きます^^;

ここからもう一度全体に戻って、細部の描き込みや気になるところの修正をしていきます。
描いた直後は、「うん、がんばった、こんなもんでしょ」と甘い判断になりがちなので、一度時間を置くのも有効です。
「絵を寝かす」という言い方をしますね。
パッと見の第一印象で違和感を覚えたところを一個ずつ潰していくことで、少しずつ完成度が上がってきます。
ここが正念場です。

 
~明日、最終回