色鉛筆画・制作過程(第3回)

前回でカラーラフを作り、だいぶイメージが固まったので、いよいよ本紙に取り掛かります。

まずは第1回で作った鉛筆下書きのデータを本紙サイズで普通紙にプリントし、鉛筆で全面を黒く塗りつぶしたトレーシングペーパーを挟んでトレスで本紙に線を写します。
今回はA3を超えているので、2枚に分割してプリントしました。
かろうじて見えるくらいの薄い線なので、アウトラインや顔などの大事なパーツは固有色で少しだけ書き起こしておきます。

大まかな進め方は、塗り始めは明るい色から、徐々に濃い色へ。
色鉛筆は濃い色の上に明るい色を乗せることが出来ないので、白は紙の地を残します。
ある程度は練りゴムや消しゴムで消せるし、細かい部分は消して表現しないと手に負えない時もありますが、気持ちとしては「消さずに済むならそれに越したことはない」というつもりで臨みます。

さて、どこから塗っていくかですが、基本的に重要な部分、もしくは手こずりそうな部分からいきます。
人物なら顔、特に目からですね。
今回は全身像にしては小さく(468mm×318mm)、0.5mmのズレが致命傷になるので気を使いますが、消せる程度の軽いタッチで描いておけば、まだまだ調整できます。
この後、全体にざっくりと色を付けていきますが、先に重要な部分に手を付けたのは、他の部分を描いている時でも、ちらっと視界に入って気になる部分が見つかるたびに修正していけるからです。
時間をおいて見ると、のめり込んで描いていたときには気づかなかったちょっとした形の狂いなどが見えてくるので、最後に描いて即完成など、恐ろしくてとても出来ません。

よくYouTubeで見かける色鉛筆の超絶写実画は、パズルのピースのようにパーツごとに完璧に仕上げていっていますが、あれは写真の完全な複写を目的としていて、明確なゴールがあるから出来るやり方で、写真から離れて自分なりの捉え方で描く絵や、今回のような空想画は、いくら下絵でイメージを固めておいても、どうしてもモヤモヤした部分は残るので、その頭の中のぼんやりしたイメージに少しでも近づけるためには、常に全体のバランスを考え、微調整(時に大手術)出来る余地を残して進めていくほうが、最終的に求める絵に近づけることができると思います。

~明日に続く


色鉛筆画・制作過程(第2回)

前回の鉛筆下書き、サイズは実寸で描いていますが、大抵トリミングや位置調整が必要となるので、一度デジタル化します。
スキャナを使ったほうがいいのですが、フィキサチフを吹いてないので、スキャナが汚れてはイヤというのもあって、デジカメで撮ることのほうが多いです。
さっさと定着させてしまえばいいのですが、まだまだ下書きに戻ってきて修正する可能性は十分にあるので(というかしょっちゅう)、可能な限りフィキサチフは使わないでおきます。
デジカメ撮影は簡易的なものなので、手持ちで適当に撮りますが、歪みはしっかり取らないとせっかくの下書きが台無しなので、そこはphotoshopで整えます。
なお、完成作のデジタル化は照明ムラをなくすことが難しいので、余程の大サイズ以外は必ずスキャナを使います。

データを一度A4普通紙に薄めに印刷して、直接色鉛筆で彩色し、今回のカラーラフを作ります。
これで一気に完成図のイメージが視覚化されて、ぐっとやる気が上がります。

私の場合、基本的に「自分が見たい絵を描きたい」というところから作品作りが出発しているので、ラフとはいえ、一応色がついて、全体の雰囲気も見えてくるこの段階は、描いてて一番楽しいステップです。

ところで、ここまでの工程は現代なら全てデジタルで可能です。
その方が効率もいいし、より完成図に近い画像を作れると思います。
実際、タブレット(板タブ)を買ってきて使おうとしたことも何度もありますが、どうにも気が乗らないというか、絵を描いてる実感が無くて、結局紙に戻ってしまいました。
おそらく生まれるのがあと10年遅かったら、普通にデジタルで絵を描いていたと思います。
この前たまたま見たYouTubeの油彩画家は、写真をPC上で加工して、形や色を理想的に整えたものをプリントし、それを見ながら絵を描いていました。
完成作を何で描くかという点では、一応手で描く積極的な理由もありますが、こと下絵については、デジタルだろうが何だろうが、使えるものは何でも使っていいと思っています。
普通、公開しませんし^^

~明日に続く


色鉛筆画・制作過程(第1回)

サーバーの刷新も無事終わったところで、今日から7日間、制作過程を毎日公開していきます。
リアルタイム制作ではなく、現時点で9割完成まで来ているので、ここからボツになることも無いだろうということでやってみようと思うに至りました。

このご時世を受けて、動画配信やオンライン講座をされている方の話題はよく目にしますが、うちにはそこまでの設備は無いので、私なりのささやかな日替わりの小ネタということで、どうぞお付き合いください。

一応、描き始めたときから、制作過程の公開は考えていましたが、あくまで「実制作の過程」で、いわゆる「教材としての過程公開」ではないので、手順は必ずしも基本通りではないし、途中での修正などもあります。

以前は、描き方の「型」が確立してこそ一人前と思っていましたが、今は、どんな達人でも型は日々アップデートしていくもので、そうした進歩の余地があるのは、もちろん未熟の裏返しではあるものの、「この前よりいい感じに出来た」という気持ちの高揚こそが、物事にポジティブに取り組む上で、ある意味必須事項だと思うのです。

というわけで、初回は下書きです。

イラスト的に絵を創っていくので、実は一番大事なところです。
写実画なら、モチーフのセッティングや取材にあたる部分でしょうか。

トレーシングペーパーにHの鉛筆でひたすら納得行くまで描きます。
人物のプロポーションは、腕の長さが頭何個分みたいな基準に縛られすぎず、とにかくパッと見で美しいか、を重視します。
これ以上現実から離れたらさすがに不自然に見える、というギリギリの所を攻めていきます。
たまにオーバーしてしまいますが、必要な挑戦だと思います。

陰影もつけて、できるだけ雰囲気をつかめるところまで描きます。
脳内の情報では足りない部分は資料を使って補います。ここ数年はDAZ3Dというフリーソフトの3D人物モデルを使って、ライティングを確認しています(英語のソフトで、極めればいろいろすごいことも出来そうですが、素人が独学でなんとかなる次元ではありません。一応、最低限の資料作りには役立ってるのでよしとしています)。
ここで形がきちっと定まるのが理想ですが、私の場合はどうしてもこの先色が入ってくると調整する必要が出てくるので、もうそういうものと割り切って、モチベーションに従って工程を進めていきます。

~明日に続く