色鉛筆画・制作過程(第5回)

前回のステップで後回しにしていた衣の陰影とアウトライン付近の背景が入り、形がはっきりしてきました。

うちには等身大のマネキンが1体あり、布を巻き付けてシワのでき方や光があたったときの影を確認するのに使うのですが、大きく風になびいているシーンは、簡単には撮影出来ないので、脳内シミュレーションと、似たシチュエーションを他の画家がどう描いたか、なども参考にしながら、それっぽく見えるように作り込んでいきます。

こういう「想像で描く要素」が多くなると、必然的にリアリティは下がります。
いわゆる「写真みたい」な絵が目指すスタイルなら、目の前に用意できる物だけで絵を構成するか、せめて個別の写真資料は無いと難しいと思います。
現実には無い世界を描こうとすると、すべての要素で完璧な資料を用意するのは不可能なので、どのくらいのリアリティでまとめるかが大事です。
無理に追求すると、描けば描くほど嘘になってしまいます。
そこのところがちょうどいい絵は、スッと世界に入っていけて、いつまでも見ていたいと感じます。

 
~明日に続く


色鉛筆画・制作過程(第4回)

引き続き、どんどん色を乗せていきます。

本来なら衣や髪のベースを作るのが先なのですが、手の上の光をどう描くかがずっと懸念材料だったので、先行して描き込みました。
他の箇所も、下絵の「こんな感じ」より一歩踏み込んで、ちゃんと描かなければいけないので、ある程度全体に色が乗ってくるまでは落ち着きません。
とりあえず「まあなんとかなるだろう」という所は後回しにして、「ここはいい感じに描けるか怪しいな」という所から手を付けていきます。

この段階では、多少粗いタッチが残っていても、まだまだあとから手を加えるので、気にしすぎないように。
時々絵を離れて見て、全体の雰囲気やシルエットがきれいに描けているか確認するのも大事です。

手順については、一応基本的な考え方が頭に入っていれば、あとは自分の性に合った描き方を見つけて、気持ちよく取り組めるようになれればいいと思います。

 
ここで少し画材の紹介を。

色鉛筆はカランダッシュのパブロ、紙は合成紙に水晶の粉末をコーティングしてオリジナルの下地を作っています。
目の細かい紙ヤスリの上に描いているような感覚と言えば、少しは伝わるでしょうか。
アクリル絵の具用の下地材(ジェッソ)を細目の水彩紙に塗るだけでも、似た描き心地を得られるので、気になった方はぜひ一度お試しください。

使った色は、今回は全体的に青系で統一された絵なので、一番濃い部分でも、暗い青(149 Night Blue)に留めてあります。
普通の光源の絵なら、青+茶で最暗部を締めていきます。
グレーや黒は、忠実に色を再現したいときにはありですが、イメージ重視で光を感じる鮮やかな絵を描きたいときは、あまり使わないほうがいいと思います。
補色に近い色をうまく重ねて「グレーっぽい色」「黒っぽい色」を出していきます。

 
~明日に続く


色鉛筆画・制作過程(第3回)

前回でカラーラフを作り、だいぶイメージが固まったので、いよいよ本紙に取り掛かります。

まずは第1回で作った鉛筆下書きのデータを本紙サイズで普通紙にプリントし、鉛筆で全面を黒く塗りつぶしたトレーシングペーパーを挟んでトレスで本紙に線を写します。
今回はA3を超えているので、2枚に分割してプリントしました。
かろうじて見えるくらいの薄い線なので、アウトラインや顔などの大事なパーツは固有色で少しだけ書き起こしておきます。

大まかな進め方は、塗り始めは明るい色から、徐々に濃い色へ。
色鉛筆は濃い色の上に明るい色を乗せることが出来ないので、白は紙の地を残します。
ある程度は練りゴムや消しゴムで消せるし、細かい部分は消して表現しないと手に負えない時もありますが、気持ちとしては「消さずに済むならそれに越したことはない」というつもりで臨みます。

さて、どこから塗っていくかですが、基本的に重要な部分、もしくは手こずりそうな部分からいきます。
人物なら顔、特に目からですね。
今回は全身像にしては小さく(468mm×318mm)、0.5mmのズレが致命傷になるので気を使いますが、消せる程度の軽いタッチで描いておけば、まだまだ調整できます。
この後、全体にざっくりと色を付けていきますが、先に重要な部分に手を付けたのは、他の部分を描いている時でも、ちらっと視界に入って気になる部分が見つかるたびに修正していけるからです。
時間をおいて見ると、のめり込んで描いていたときには気づかなかったちょっとした形の狂いなどが見えてくるので、最後に描いて即完成など、恐ろしくてとても出来ません。

よくYouTubeで見かける色鉛筆の超絶写実画は、パズルのピースのようにパーツごとに完璧に仕上げていっていますが、あれは写真の完全な複写を目的としていて、明確なゴールがあるから出来るやり方で、写真から離れて自分なりの捉え方で描く絵や、今回のような空想画は、いくら下絵でイメージを固めておいても、どうしてもモヤモヤした部分は残るので、その頭の中のぼんやりしたイメージに少しでも近づけるためには、常に全体のバランスを考え、微調整(時に大手術)出来る余地を残して進めていくほうが、最終的に求める絵に近づけることができると思います。

 
~明日に続く